自社開発と受託開発の違いは、同じ内容の製品・サービスの開発を自社で全て行うことと外部から受託された部分だけ開発をすることの違いです。
この開発にエンジニアがかかわりますが、働き方が大きく変わってきます。仕事の進行・チーム構成・担当範囲・必要なスキル・マネジメントがそれぞれで異なるからです。
ここでは、自社開発と受託開発の仕事の違い・エンジニアの働き方の違い・メリットデメリットについて詳しく説明します。ぜひ、参考にしてください。
自社開発と受託開発の仕事には大きな違いがある
自社開発では、自分が社員として働いている会社で、その一員として会社独自のシステム・商品を作ります。
受託開発とは顧客企業の要望をすべて反映できるシステムを設計・構築し、顧客独自の商品として発売するために成果物を納品することです。
自社開発ではシステム運用からもたらされる利益まですべて自社に還元されますが、受託開発は納品した開発商品が莫大な利益を上げても還元されません。
エンジニアは、自社開発では開発から運用・保守までに責任を持ちますが、受託開発は希望の商品・サービスを納品した段階で仕事は完了です。
このように仕事の面で見ても、自社開発と受託開発では大きな差があります。
自社開発のエンジニアの仕事の特徴
自社開発は、自社に必要なシステムやサービスを内部で開発するため、独自の設計やメンテナンスを工夫できます。ですから、エンジニアが自分のやり方で進めることが可能です。
自社開発であることから製品やサービスの需要調査から始めることができます。さらに、製品からもたらされる成果を自身で確認することが可能です。
自社開発は成果が上がらなければ短期間で作り直しや見直しが求められるため、エンジニアにとっては負担になる場合もあります。
市場調査と企画からスタート
企業は、市場調査を通して自社での営業戦略のために必要なデータを集めます。自社開発する商品が利益をもたらすような戦略を立てるための情報収集が必要です。
過去から現在までのいろいろな情報の中から、定性調査と定量調査の2つの調査を通して企業に必要なデータを分析・活用します。
自社開発のエンジニアは、この調査に基づいて企画段階から戦略を立てることが仕事です。エンジニアは、自社にとって有効な開発の方針を経営者に提案します。
納期に融通が利くのでスケジュール調整しやすい
自社開発を行うには、社内の人員やインフラの都合を考えたうえで開発のためのスケジュールを立てなければなりません。
トラブルが発生したら一時ストップさせたり予定する発売時期などを延期したりすることも、社内会議で調整が可能です。
すばやく商品公開したいときの短納期からじっくり大きな成果を上げるための中期計画まで、案件に応じてさまざまなスケジュールを立てることができます。
システムリリース後のブラッシュアップが可能
自社開発では開発・開発プロセス・成果品が自社所有です。そのため、リリースしてからでも比較的自由に修正・改良・バージョンアップできます。
システム開発は、顧客のニーズに合わせた変更を求められることが普通です。自社開発に適した開発方法として、アジャイル開発という手法を使うことが増えています。
アジャイル開発とは、計画・設計・実装・テスト・運用の工程を小さい単位や短いサイクルで繰り返す手法のことです。
アジャイル開発では要件定義をおよその仕様で決定するため、一部だけ変更するなどの仕様変更に強くその便利さが注目されています。
アジャイル開発は、リリース後にどんどん仕様変更・ブラッシュアップしていくことが大前提の開発手法です。
自社開発のエンジニアに求められる能力
自社開発のためには、中心となるエンジニアの存在が不可欠です。そのエンジニアにはシステム開発のための高度なITスキルが求められます。
自社開発は、企画前の市場調査から企画・開発・運用・評価・改善まで自社で行うため、ITのスキル以外にも幅広い能力やスキルが必要です。
ここでは、自社開発に携わるエンジニアに必要な能力について説明します。
ユーザーのニーズ調査・分析能力
ユーザーのニーズ調査とは市場調査と若干似ていますが、違いはより核となる利用者に限った情報収集をすることです。
調査方法としては、インタビュー調査(オープンクエスチョン)・行動観察・インタビュー調査(クローズドクエスチョン)などがあります。
情報収集の次にすることは、このターゲットへの効果的な施策を行うための分析(顧客分析)です。
分析手法は、答えの導き方によって多岐にわたる手法があります。
エンジニアにとってはあまり携わることのない分野ですから、マーケティング等のプロに手助けを求めるとよいでしょう。
高度な企画力と開発力
これまでアイデアの提案【企画(What)】を発案するのは、エンジニアではなく別の企画職が担当していました。
通常エンジニアは企画職から出されたアイデア【企画】を具現化【開発(How to)】する仕事が主です。
企画担当者がプランを出しエンジニアに開発を依頼するというように、双方の役割は完全に分化されています。
しかし現在では、より高い専門性とブレイクスルー能力を保持した「企画できるエンジニア」であることを求められる業務が多くなっているのが実情です。
市場の変化に対応する柔軟性
企画・立案ができるエンジニアは、自社開発を行う企業で評価されはじめています。市場の変化に対応するためには、時代の変化に対応できるエンジニアが不可欠になりました。
今後は「IoT」や人工知能「AI」など、最先端のIT技術が普通の生活に浸透していきます。IT技術をより使いやすくするシステム開発が、これからの営業戦略の中心です。
市場の変化と最新技術とのマッチングに柔軟な考え方で対応できるエンジニアの需要が高まってきています。
受託開発のエンジニアの仕事の特徴
受託開発は、開発したシステム・製品・アプリケーションなどの成果物を契約先へ納品する仕組みです。
納品した成果物に対しての報酬を発注企業(開発企業)から受け取るところが、自社開発とは違っています。
受託開発の分野も変化が止まりません。新たに、System Engineering Service(SES:システムエンジニアリングサービス)というサービスが誕生しました。
SESは成果物を納品して報酬を受けるのではなく、技術力に対してのみ報酬を受け取る仕組みです。製品を作るのではなく作り方を教える技術を売って報酬を得ます。
どちらもエンジニアとしてプロフェッショナルな技術力・開発力が同じように求められますが、報酬額は異なります。
クライアントとの打ち合わせ
受託開発では、クライアントとの打ち合わせが一番大切です。
【1回目】どのようなシステムにするかクライアントから希望を聞き取ります。この打ち合わせは、エンジニアとプログラマーが必ず一緒に参加することが重要です。
エンジニアとプログラマーが同じ認識に立たなければ、クライアントの要望に合ったシステム開発はできません。
【2回目】1回目の打ち合わせをもとに、提案書を作成し再度打ち合わせを行います。そこでエンジニアとプログラマーとクライアントの認識を共通化させることが大切です。
【3回目】前回の打ち合わせの結果から、システム設計の仕様書を提示し納期やスケジュールを協議し決定します。予算の見積もりを出せる段階はここからです。
このように打ち合わせ会を重ねお互いの考え方を出し合うことで、よりよいシステムが作られます。
顧客の要望に合わせた設計・開発
受託開発の場合は、顧客の要望ありきでの設計・ 開発が大前提です。また、顧客の要望によってどんどん仕様変更なども発生したりします。
エンジニアは、クライアントからの要望に対して技術者としての意見を明確にすることも必要です。システム開発は、クライアントの希望とエンジニアの技術がそろって完成します。
途中の設計変更や後々の大きなトラブルを防ぐためにも、安易な妥協はクライアントをサポートしたことにはなりません。常に最善の策で共通理解することが必要です。
予算と納期のバランスにも悩まされます。エンジニアはプロジェクトマネージャーという役割も併せ持ち、クライアントと調整・交渉する力も必要です。
納期厳守のスケジュール調整
受託開発は、納期に関してもクライアントの要望を厳守しなければなりません。受発注の最初の条件によっては、開発内容に見合わない無理なスケジュールとなってしまいます。
また仕様変更などによってスケジュールに過不足がでたりすることもあり、それによってエンジニアの実際の稼働時間にも大きく影響してきます。
スケジュールの変動は予想されることですから、プロジェクトチームの運用の工夫や臨時的な人員配置も想定しておかなければなりません。
GeeklyReviewでは、企業の口コミ情報を閲覧できます。エンジニアとしての働き方の違いの実際の声も聞けますから参考にしてみましょう。
受託開発のエンジニアに求められる能力
受託開発は、クライアントからの要望に合わせたシステム設計ができなければいけません。そのために、エンジニアとしてのスキルとともにより広い範囲の能力が求められます。
受託開発には、納期と予算がクライアントから示されます。そのため、開発にかかわるマネジメント力が必要です。
避けられない納期の遅れや予算の不足などが発生した場合には、クライアントとの交渉もしなければなりません。そのためのコミュニケーション力や交渉力が必要です。
ここでは、受託開発のエンジニアに求められる能力について詳しく説明します。
顧客の要望に合せたヒアリング力と設計・開発力
設計・ 開発は顧客の希望に沿って進められなければなりませんから、顧客の意図を共有することが不可欠です。
顧客の要望をよく聞き、納品に至るさまざまな条件に対応しなければなりません。そのために、ヒアリング力はとても重要です。
システム開発力を十分に発揮するためには、顧客の要望を丁寧にヒアリングすることが大切になります。
また、顧客の要望に柔軟に対応できるシステムを開発するには、コミュニケーション力が必要です。
納期を意識したスピード感
受託開発では、外部から請け負った仕事を納期までに完成させなければなりません。そのために1番必要なのは、プログラミングスキルです。
顧客は納期に納品できるエンジニアを求めていますから、作業スピードは重要になります。また、プロジェクト全体の作業の進行を予定通りに進めるマネジメント力も大切です。
納期のある仕事は、作業進捗や人事配置を考えてシステム開発のスピードアップを常に考えるエンジニアが求められます。
タスクを正確且つ確実にこなす力
受託開発は、確実に製品を完成させる能力が評価される仕事です。納期やシステムの完成度が問われます。この仕事は信用が大切ですから、常に評価に結びつく努力が必要です。
大きなシステムを作り上げるためには、小さなタスクを1つ1つ正確に完成させることが求められます。その1つ1つの積み重ねが大きな結果につながることを常に意識しましょう。
エンジニアのマネジメント力は、このタスクの積み上げにも役立ちます。正確なタスクを組み合わせて大きなシステムに仕上げていくことがエンジニアの仕事です。
それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説
システム開発エンジニアリングは自社開発と受託開発に分かれていますが、それぞれのシステム開発にはメリットとデメリットがあります。
システム開発には莫大な経費・開発期間・開発時間など企業にとっての課題がありました。このメリットを活用することで、企業としての課題を解決することが可能です。
ここでは、それぞれのメリットとデメリットについて説明します。
自社開発エンジニア
自社開発エンジニアとして働くメリットを考えてみましょう。
- 自分のアイデアをカタチにできる
- スケジュールが調整しやすい
- 関係者のほとんどが社内にいるからコミュニケーションがとりやすい
- 実際のユーザーの反応や意見にふれることも不可能ではない
このようなことから、やりがいを感じる人も多くいます。
システム開発の準備段階から参画できることは、1つのプロジェクトを最後まで見ることができますからとても貴重な経験です。
しかし、メリットだけではありません。自社開発の場合のデメリットには、次のようなことが挙げられます。
- 人材が社内固定的で人脈が拡がらない
- 多様な価値観や技術にふれることができない
- リリース後の運用も任される
- 責任を取らされる可能性がある
- システムがヒットしても給料に反映されることは少ない
このようなことが負担に感じる人もいることは事実です。あくまでも、この仕事に従事するかどうかは自身の判断を大切にしてほしいと思います。
受託開発エンジニア
受託開発の場合のメリットを探ってみました。
- 人脈が拡がる
- 次の案件の受注につながる実績ができる
- 実績を重ねてポートフォリオが作成できる
- さらなるステップアップが期待できる
自社開発とは違った出会いやキャリアアップの観点が出てきています。この他にも、給与にも違いがあることも特筆すべきことでしょう。
また、受託開発のデメリットにはどのようなものがあるか調べてみました。
- 納期が厳しい
- 報酬や給料が実働と見合わない(低いと感じる)
- クライアントの影響力が強い
- (SESの場合には)客先常駐の可能性が高くなる
外部から受託する仕事ですから、自社開発より厳しい条件があります。自身のスキルアップにとって役立つかどうかも大切な要件といえるでしょう。
自社開発と受託開発で迷うなら企業口コミを確認しよう!
自分のエンジニア・スタイルが、自社開発と受託開発のどちらに向いているのかを判断することは難しいものです。
これからの自分のキャリアプランに向けて必要な努力や準備する経験について、経験者の口コミを見て参考にしましょう。
GeeklyReviewでは、企業で働く方たちの口コミ閲覧が可能です。仕事内容や評価なども参考にできますから、自社開発や受託開発で働くエンジニアの声を聞いてみましょう。
エンジニアとして自分にあった開発スタイルを選ぼう
働き方は自分で選ぶ時代になりました。同じ分野の開発を続けたいのか、毎回違うターゲットへ向けての製品を送り出すのかを選ぶのも決めるのも自分です。
自社開発と受託開発では、同じエンジニア職でも役割・ 求められるスキルが違います。自分ができることに取り組むだけではなく、取り組みたい仕事を考えてみることが大切です。
開発人材を募集している企業一覧
自社開発と受託開発の違いはありますが、自分でやりがいのある仕事を見つけることが最初のスタートです。自分を求めている企業を探してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者

ギークリーメディア編集部
主にIT・Web・ゲーム業界の転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればIT人材の流れ等、「IT業界に携わる転職・採用」の事情を提供していきます。