IT業界にはIT土方という言葉がありますが、ご存知でしょうか。IT業界の劣悪な労働環境で単純労働をする人のことをIT土方と呼びます。
IT土方になってしまうと、せっかく身につけたITスキルも発揮できなくなります。年収も少なく、やりがいも感じない職種です。
単純作業を続けているうちに新しい技術に触れることがなくなり、キャリアアップもかなわなくなるのがIT土方です。
ここでは、IT土方といわれる理由や年収の相場を解説します。さらに、IT土方から抜け出す方法もお教えします。
そもそもIT土方とは何か
IT土方とは、IT業界において「多重請負構造の末端で、高いスキルを必要としない単純作業を低賃金・長時間労働を強いられている人たち」の俗称です。
IT業界は「元請け→2次請け→3次請け」といった多層構造になっており、ヒエラルキーの最下層で働くIT人材を建築・土木業界の現場で働く人に例えています。
IT産業は華やかなイメージとは異なり、実際の作業は単調で長時間に及ぶことも多くあります。
また、元請け企業が仕事を下請け企業に丸投げしたり、元請け企業が厳しい労働条件で人材を使ったりといったことも現状です。
一般的にはIT土方はプログラマーという認識でしたが、最近はルーティーン化された単純作業をする人材のこともIT土方と呼びます。
IT土方は、デジタル土方やコンピューター土木作業員とも呼ばれています。
IT土方の主な仕事内容
IT業界のシステム開発においては、元請けから2次請け・3次請けといったピラミッド構造になっています。
そのため、IT土方の仕事内容は下請けに回ってくる下流工程の仕事です。プログラムが正常に動くかをチェック・システムの監視・簡単な修正・コーディングなどです。
他人がプログラミングしたものをコーディング・テスト・修正といった、高いスキルは必要のない仕事となっています。
また、近年ではヘルプデスク・テクニカルサポート・パソコンのセットアップ・キッティングなどをする人材もIT土方といわれています。
プログラマーがIT土方といわれているのは何故?
一般的には、IT土方はプログラマーといわれています。何故ならIT業界において、下請け企業で単純作業に従事しているのがプログラマーだからです。
実際はプログラマーらしい仕事は少ないのですが、下請け企業はプログラマーとして採用しています。
ここでは、プログラマーがIT土方といわれている理由を紹介します。
SIerのピラミッド構造によるもの
SIer(エスアイヤー)とは、システム開発や運用を請け負う企業のことです。
前述のようにSIerはピラミッド構造になっていて、下にいけばいくほど下流工程の仕事を受けることになります。
ピラミッドの下位SIerに回ってくる仕事は、簡単で工数のかかるものだけです。クリエイティブな仕事は皆無で、単純作業がほとんどです。
下位SIerでは仕事の納期が迫っている場合が多く、残業や休日出勤を余儀なくされることが常態化しています。払われる賃金も下層のSIerになるほど安くなるのが一般的です。
プログラムの設計までできない
プログラムの設計は、本来はシステムエンジニアの仕事です。システムエンジニアの設計にそってプログラミングするのがプログラマーです。
プログラマーが設計書や計画書の作成をする企業もありますが、それは元請けSIerのプログラマーに限ります。
下請けSIerのプログラマーがプログラムの設計をすることはありません。
しかし、下請けSIerの多くは社員を客先常駐させます。常駐先によっては、下請けSIerから来ているプログラマーでもプログラムの設計に携われることがあります。
そこで経験とスキルを身につけて、キャリアアップすることも可能です。
最新の技術にアップデートされない
IT土方といわれているプログラマーの仕事は、下流工程の単純作業がほとんどです。
そして、コーディングやテストだけの仕事では、最新の技術にアップデートされることは少ないと考えられます。
ITの技術は日々急成長をしています。そこに携わっていても、IT土方では変わらない作業を数多く消費するだけです。
長くIT土方をしていると、最新の技術を身につけることが不可能になってしまいます。
IT土方でいるデメリット
IT土方とは、少し揶揄されているイメージのある言葉です。そこには「専門職ではなく作業員だ」という意味合いが見て取れます。
実際、IT土方でいることにはあまりメリットはありません。ここでは、IT土方でいるデメリットを紹介します。
スキルが身につかない
IT土方でいるデメリットは、スキルが身に付かないことです。IT土方の仕事は、単純作業でマニュアル通りに行うものがほとんどです。
下請けSIerのプログラマー求人に「未経験可」が多いのはそのためと推察されています。IT土方を続けていてもスキルは身につかず、キャリアアップは望めません。
労働時間が長く休日出勤になることも
IT土方のデメリットは、労働時間が長くなることです。休日出勤も多く、残業代や代休が無いこともあります。
下請けのSIerではもともと差し迫った納期の仕事が多く、労働時間が長い傾向があります。納品前になってやり直しや仕様変更を命じられるケースも、長時間労働の原因です。
労働時間が長いことで、健康面だけでなく精神面にも不安を感じる人が少なくありません。
収入が上がらない
IT土方の最大のデメリットは、収入が上がらないことです。もともとIT土方の収入は、元請け企業のプログラマーと比べると少なくなっています。
若いうちは問題なくても、IT土方でいるかぎりは年齢が上がっても収入の大幅アップは期待できません。
さらに、IT土方のままだとスキルが身についておらず、転職してもすぐの収入アップは難しいと考えられます。
IT土方の年収相場はどのくらい?
厚生労働省の調査では、IT産業で働いている人の下位25%の年収は100万円~350万円と報告されています。
下位25%がIT土方とは限りませんが、そのことからIT土方の年収は上限350万円と考えられています。
対して、一般的なプログラマーの平均年収は400万円~500万円です。IT土方の年収は、元請け企業のプログラマーよりも100万円程度低いと推察されます。
さらに、IT土方は年齢が上がっても年収が上がらない傾向があります。これは、単価の安い仕事ばかりを請け負っているからです。
IT土方にならないためには
IT土方のことを知るほどに「IT土方にはなりたくない」と考える人は少なくないはずです。しかし、IT関連の仕事で好条件を提示している求人の多くはIT土方です。
好条件で未経験可という求人なら、IT土方の可能性はさらに高くなります。ここでは、IT土方にならないための方法を紹介します。
自社開発の企業を選ぶ
IT土方にならないためには、自社開発の企業を選びましょう。IT以外の業界でもITの活用は必須になっており、社内エンジニアを抱える企業が増えつつあります。
社内エンジニアになると、IT土方として働くことはありません。社内エンジニアがいれば上流工程から下流工程まで、すべて自社で行うことになります。
納期に迫られて過密スケジュールというリスクも少ない傾向です。大企業となると福利厚生も充実しています。
SIerに転職するのなら、できるだけ上流工程を担える企業がおすすめです。「どこが上流工程のSIerか分からない」という人は、企業の情報収集から始めましょう。
他社と比較して高過ぎる給与額でないか確認する
他社と比較して高すぎる給与を提示している会社には注意が必要です。IT業界の給与事情をよく知らない未経験者を狙ったブラック企業の可能性があります。
また、給与が20万円~80万円など、幅が大きい場合も要注意です。ほとんどの場合、内定後に提示される給与は下限の20万円となります。
下請けSIeの企業なら劣悪な労働環境が原因で、常に人材不足していると推察できます。いつも求人を出している企業にも注意が必要です。
給料に固定残業料が含まれていないか確認する
給料に固定残業料が含まれていないかを確認しましょう。固定残業料込みの給与なら、いくら長時間労働をしても残業代はもらえません。
残業代が発生しないからという理由で、労働時間を記録しない会社もあります。本来、固定残業代を運用するのであれば、範囲となる残業時間を明記しなくてはなりません。
その残業時間を超える場合は、割り賃金が支払われます。そのような説明もなく、固定残業料込みの給与を提示する会社はブラック企業の可能性大です。
他業界への転職も検討する
IT土方にならないためには、他業界への転職も検討してみましょう。
他の業界でも、劣悪な労働環境のブラック企業という可能性はあります。しかし、現状ではIT業界と比較するとブラック企業は少ない傾向です。
「どの業界に転職すれば良いのか」自分で分からない人には転職サイトの利用をおすすめします。
GreeklyReviewでは、各業界の企業一覧を見ることができます。ぜひ参考にしてください。自分にピッタリの業界が見つかるはずです。
IT業界の内情は経験者の口コミをチェックしよう
IT業界で働き始めたのなら、やはりプログラマーやシステムエンジニアとしてキャリアを積んでいくのがベストです。
しかしうかつに転職しては、またIT土方になってしまうリスクもあります。どの企業がブラック企業なのか、外からは分かりにくいからです。
内情を知るのには、経験者の声を聞くのが1番です。GreeklyReviewでは、経験者のリアルな口コミや企業の内情を見ることができます。
ぜひチェックしてください。経験者の声を聴いて、ホワイト企業を選びましょう。口コミをチェックすることは、内情を知るのに有効です。
IT土方にならないためには企業情報をしっかりチェックするのが重要
IT土方にならないため、IT土方から脱却するためには企業情報をしっかりチェックする必要があります。
企業のホームページや応募要項だけでは、知ることのできる情報は企業側のものだけです。「いつも人材不足で募集している」などの企業はブラック企業の可能性があります。
しかし、そうでない可能性もあります。やはり、働いている側の企業情報も確認することが重要です。口コミサイトを活用してみましょう。
プログラマーが活躍するIT企業一覧
プログラマーが活躍する企業一覧を紹介します。IT土方にならないためにも、ぜひ参考にしてください。
この記事の監修者

ギークリーメディア編集部
主にIT・Web・ゲーム業界の転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればIT人材の流れ等、「IT業界に携わる転職・採用」の事情を提供していきます。