「情シス」と「社内SE」は企業内でIT関連の業務を担うという点では似ていますが、業務内容や必要なスキルには違いがあります。
どちらもIT系の求人でよく目にする職種ですが、具体的な違いがわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では情シスと社内SEについて業務内容、必要なスキル・キャリア・年収の違いとそれぞれのメリット・デメリットについても詳しく解説します。
情シスや社内SEへの転職を目指している方はぜひ参考にしてください。
情シスと社内SEの定義
IT系企業の求人では「情シス」と「社内SE」というフレーズをよく目にします。情シスと社内SEを同じものとして扱う場合もありますが、両者は異なる存在です。
違いをよく知らないまま応募すると「思っていた仕事内容と違った」「自分のスキルがいかせない」というミスマッチが起こるため、情シスと社内SEそれぞれの特徴をしっかりと把握しましょう。
情シス
「情シス」は社内の情報システムを担う部門のことで、IT専門の部署です。
情報システム部門は社内インフラの企画・構築やシステム開発など、社内のIT業務全般を担っています。
情シスが扱う情報システムには「基幹システム」と「情報システム」の2種類があります。
- 基幹システム:生産・販売・在庫管理・会計・人事・給与・社員の勤務管理など企業が業務を行ううえで基幹となるもの
- 情報システム:パソコン・電話・FAX・ネットワークなど通信機器やパソコンのOS・アプリケーション・ミドルウェアなど
企業によって部署の名称は異なりますが、「情報システム部」「IT戦略部」「業務システム部」などシステムやITという単語がつく場合が多いです。
小規模な企業では部署として情シスを置いていない場合もあり、社内のIT技術者が情シスを兼任する場合もあります。
社内SE
SEはシステムエンジニアの略で、「社内SE」は企業内におけるIT専門の担当者のことです。
一般的なシステムエンジニアはクライアントとなる企業のシステム企画・構築などを行いますが、社内SEの場合は自社と自社の社員をクライアントとして業務を行います。
情シス部門がある企業では情シス所属の社員が社内SEと呼ばれますが、ない場合は総務や企画などの部門に社内SEが配置されている場合もあります。
社内SEは企業が求めるシステムを導入する仕事を請け負う「SIer」と混同される場合がありますが、業務内容や働き方が異なるため求人情報をチェックするときはよく確認しましょう。
情シスと社内SEの違いを比べてみる
情シスは社内のIT専門部署、社内SEは自社のシステム開発を行うIT技術者という違いがあります。
それぞれの業務内容、必要なスキル、キャリア、年収はどのように違うのか比較してみましょう。
業務内容
情シスの業務のメインとなるのは社内のITシステムの企画・構築です。IT専門部署のため業務は多岐にわたりますが、主に下記の5つの業務があります。
- 情報システムの構築・運用・保守:業務改善のために社内の基幹システムの再構築を行い、保守・運用をする
- インフラの構築・運用・保守:自社サーバーやネットワークの構築・運用・保守とセキュリティー対策やデータ保全などを行う
- IT戦略・企画:営業戦略に基づいて社内システムの企画・構築を行う
- ヘルプデスク:日常的に社内で起こるPC関連トラブルをサポートする
- ITリテラシー教育:最新機器導入時には研修を行うなど社員のITリテラシー向上のための教育を行う
社内SEは一般的なシステムエンジニアと同じくシステムの企画・開発を行いますが、自社システムに関わる業務のみを行うのが特徴です。
情シス部門に多くの社員がいる企業では上記の業務内容の一部を担当する場合が多いです。
社内SEの人数が少ないと1人ですべての業務を担当する場合もあり、企業によって違いがあります。
必要なスキル
情シス・社内SEともに必要なスキルは同じで、システム開発・運用の基本的なスキルが必須です。
IT技術は日々進化しているため、AIやIoTなどの最新技術を常に習得し続けなければなりません。その他にも下記のようなスキルが求められます。
- マネジメント能力:システム開発を外注する場合はマネジメント能力が必要
- コミュニケーション能力:業務改善のために最適なシステムを提案するためにはITに詳しくない社員にも分かりやすく説明するなどコミュニケーション能力が必要
- ヒアリング能力:問題点や課題を明確にしニーズに合ったITシステムを実現するためにはヒアリング能力が重視される
- プレゼンテーション能力:システムを利用する社員全員に対応するためには相手の知識や状況に合った説明をする能力が問われる
自社の業務改善のためのシステムを開発するという点から、IT技術以外にも下記のような知識が必要です。
- 業務知識:システムの企画・導入のために生産、販売、会計、財務など社内業務の知識が必要
- 業界知識:経営課題をシステムで解決するためには自社が関わる業界のビジネス構造や環境の理解が必要
下記のような経験があると情シス・社内SEの業務にいかせます。
- リーダー経験:プロジェクトリーダーとしてメンバーの育成や進捗管理の経験があると有利
- 顧客折衝の経験:経営陣や社内の関係部門との調整が業務に含まれるため同様の経験があると評価される
- 業務改善の経験:新しい開発ツールやレビュー方法の見直しなど、自発的に業務改善に取り組んだ経験があると評価される
キャリア
情シスは企業の経営戦略に沿って社内のITインフラやシステムを構築することが主な業務です。
企業に対する帰属意識を持ちやすく、勤務地も固定されているためプライベートと仕事を両立しやすいのが特徴です。IT業界では残業時間も少ない傾向にあります。
プロジェクトごとに新しい技術を習得していくので仕事を通して日々スキルアップもできます。
社内SEは業務システムに関する幅広いノウハウと知識が身につきますが、開発するのは自社内のシステムであり必要なスキルは限定的です。
積極的に勉強する姿勢がないと最新のIT技術やスキルを習得する機会が少なくなります。
年収
情シス・社内SEの平均年収は厚生労働省の「資金構造基本統計調査(2019年)」によると568.9万円でした。
年齢が上がるにつれて年収も上がっています。
- 20代:360〜410万円
- 30代:490〜540万円
- 40代:630〜680万円
情シス部門があり多くの社内SEを雇用する大手企業ほど年収が高い傾向にあります。転職先候補となる企業の規模や給与水準をチェックしましょう。
情シスと社内SEはどちらの求人が多い?
IT人材は慢性的に人手不足の状況で情シス・社内SEどちらも求人数は安定していますが、企業によっては情シス部門がない場合があります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のためにシステムを内製する企業が増えた影響で、社内SEの需要が増加しています。
社内SEは自社で育成する企業も多く、未経験者の求人も少なくありません。異業種からIT業界へ転職する場合は社内SEからのステップアップもひとつの手段です。
それぞれの実情が知りたいなら口コミサイトの活用を
情シス・社内SEは企業によって業務内容が大きく異なる職種で、システムの開発を自社で行うのか外注するのかによって、情シス・社内SEの社内での重要度が変わります。
実情は実際にその企業で働く社員にしかわかりません。
応募の前に気になる企業の口コミをチェックして、情シス・社内SEとして働いている社員の口コミをのぞいてみましょう。
GeeklyReviewではIT業界のさまざまな企業の口コミを見ることができます。リンク先をぜひチェックしてください。
情シスのメリット・デメリット
情シスは企業のIT専門部署で、専門性が高い仕事です。
自分のITスキル・知識をいかして業務改善を行い、効率化やコストダウンを数値的に実感できるため、大きなやりがいを感じられます。
しかし、メリットだけではありません。情シスで働くことのメリット・デメリットをまとめました。
スキルアップが図れる
情シスは社内でPCやIT関連の幅広い業務を担当するため、スキルアップに期待できます。
社員のパソコン設定やインターネットの管理をするため、インターネットやサーバーの知識が身につきます。
社員へのヒアリングを行うことでコミュニケーション能力が伸ばせるでしょう。
システム導入によるコスト削減や業務プロセスの改善を提案することでITコンサルティングのような仕事を経験できる場合もあります。
継続して勉強する必要がある
社内システム導入によるコストダウンや業務効率化などを提案するためには、常に新しい技術を習得してスキルのアップデートを続ける必要があります。
学習意欲が高く、最新技術の勉強やスキル習得が好きな方には問題ありませんが苦手な方はデメリットと感じる部分です。
IT技術だけでなく、自社が関わる業界についても時代や消費者のニーズなどを把握する必要があります。
社内SEのメリット・デメリット
現代社会ではITを導入していない企業はほとんどないため、社内SEには社内の基幹システムを支える重要な役割があります。
やりがいがある仕事ですが、デメリットもあります。社内SEとして働くことのメリット・デメリットをまとめました。
幅広い業務に携われる
社内SEはシステムを利用する社員の立場から幅広い業務に携わり、社内システムの開発・運用・保守を行います。
- 人事
- 会計
- 在庫管理
- 生産管理
- 販売管理
- マーケティング
社内のさまざまな領域でシステム開発を行うため、基幹システムやグループウェア、会計パッケージ、MA(マーケティングオートメーション)などさまざまな業務システムの知識が得られます。
組織全体の業務を把握し全社員にとってメリットがあるシステムを作るため、SEでは経験できない業務も経験できます。
SEが1人だと激務になることも
情シスにあまり予算をかけられない企業では社内SEが自分しかいない場合があり、このような状況をひとり情シスと呼びます。
企業の経営層がITに詳しくない場合は「社内SEはコスト部門である」というイメージを持たれてしまい、「人員を減らしても問題ないだろう」と判断されます。
ヘルプデスク対応に追われてIT戦略などの本来の業務に集中できず、過労に悩む人も少なくありません。
このような状況では社内SEの価値が評価されにくいため、社内での立場が弱くなる可能性があります。
情シスと社内SEで迷っているなら現場の声を聞いてみよう
情シスと社内SE、自分にはどちらが向いているのか迷う場合は現場で働く社員の声を聞くと参考になります。
企業によって情シス・社内SEに求められる役割は異なり、働く環境も違うため転職を考える場合はしっかりと下調べしましょう。
GeeklyReviewでは情シス・社内SEの求人がある企業で働く社員の口コミを見ることができます。リンク先でぜひチェックしてください。
情シスと社内SEはどちらも魅力的な仕事
ビジネスにIT技術が欠かせない現代では情シス・社内SEの役割や重要度は増していて、クラウド化やIoTなどの最新技術を導入する企業も増加しています。
今後もさらに情シス・社内SEの需要が高まることが考えられます。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、転職を考えるときは自分のスキルやキャリアに適した方向性を見極めましょう。
情シス・社内SEの求人がある企業一覧
GeeklyReviewでは下記のような企業で活躍する情シス・社内SEの生の声を見ることができます。
この記事の監修者

ギークリーメディア編集部
主にIT・Web・ゲーム業界の転職事情に関する有益な情報を発信するメディアの編集部です。転職者であれば転職市場や選考での対策、企業の採用担当者様であればIT人材の流れ等、「IT業界に携わる転職・採用」の事情を提供していきます。